インプラント治療を行う際、顎の骨の高さや量が不足していると、インプラントを支えることが難しくなります。

顎の骨は上顎と下顎によって形状が違いますが、上顎は上顎洞と呼ばれる空洞が近く、骨の高さが足りないと、インプラントがこの部分に突き抜けてしまう可能性があります。

このような場合、インプラントを埋入するために骨を増やす骨造成手術が必要になります。

その代表的な方法としてサイナスリフトとソケットリフトがあります。

これらの治療方法の違いや特徴、メリットとデメリット、さらには具体的な手順について詳しく解説します。

■サイナスリフトとは

◎サイナスリフトの特徴

サイナスリフトは、上顎の骨の高さが5mm以下と、大きく不足している場合に行う骨造成手術です。

歯槽骨の側面から上顎洞に通じる穴を開け、粘膜を持ち上げた後、そこに骨補填材を入れることで骨の高さを確保します。

この方法は、骨の高さが5mm以下の場合に適用されることが多く、広範囲の骨造成が必要なケースに向いています。

◎サイナスリフトのメリット

骨の高さが大きく不足している場合でも、十分な骨の厚みを確保することができます。

複数本のインプラントを埋入する場合にも適応できるため、広範囲の治療が可能になります。

◎サイナスリフトのデメリット

歯肉の側面を大きく切開し、歯槽骨に穴を開けるため、術後の腫れや痛みが生じやすくなります。

骨がしっかりと安定するまでに約6ヶ月～9ヶ月の期間が必要となるため、インプラントの埋入まで時間がかかることがあります。

◎サイナスリフトの手順

1. 局所麻酔をして、歯肉の側面を切開します。

2. 上顎洞の側面に繋がったら、粘膜を慎重に剥離して持ち上げます。

3. できたスペースに骨造成材を入れ、穴を閉じて縫合します。

4. 骨が十分に安定するまで待ち、その後、インプラントを埋入します。

■ソケットリフトとは

◎ソケットリフトの基本情報

ソケットリフトは、上顎の骨の厚みが5mm以上あり、それほど大きな不足でない場合に行う骨造成手術です。

インプラントを埋入するために開けた穴から上顎洞粘膜を持ち上げ、その下に骨補填材を充填する方法です。

◎ソケットリフトのメリット

大きな切開が不要で、骨造成とインプラント埋入を同時に行うことができるため、治療期間を短縮できる場合があります。

◎ソケットリフトのデメリット

骨の高さが5mm以下の場合には適用が難しく、大きな骨造成が必要なケースには向いていません。

◎ソケットリフトの手順

1. 局所麻酔を施し、インプラントを埋入する穴を開けます。

2. その穴から上顎洞粘膜を持ち上げ、粘膜の下に骨補填材を充填し、そのままインプラントを埋入します。

■サイナスリフトとソケットリフトの比較

◎骨の状態

サイナスリフトは、骨の高さが大きく不足している場合に適しており、広範囲の骨造成が可能です。

一方、ソケットリフトは、比較的骨の高さが残っている場合に適用されます。

◎治療の侵襲度

サイナスリフトは歯肉の側面を大きく切開するため、手術の負担が大きくなります。

ソケットリフトはインプラント埋入用の穴から骨造成を行うため、より負担の少ない方法とされています。どちらが適応になるかは患者さまの状態によって異なるため、歯科医師に確認してみましょう。

◎治療期間

サイナスリフトは、骨が安定するまで6ヶ月～9ヶ月の待機期間が必要となります。

一方、ソケットリフトはインプラント埋入と同時に行うことができるため、サイナスリフトよりも治療期間が短くなります。

【レントゲン、CTスキャンなどで骨の状態を確認します】

インプラント治療において、骨の高さや量が不足している場合には、骨造成手術が必要になります。

サイナスリフトは、骨の高さが大きく不足している場合に適した治療法で、広範囲の骨造成が可能です。

一方、ソケットリフトは、比較的骨が残っている場合に適用されます。

それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、患者さまの骨の状態によって選択が異なります。

インプラント治療を検討している方は、歯科医師と十分に相談し、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。