インプラントは歯を失った際の補綴治療の一つです。
基本的には長寿命で知られているインプラントですが、長期間使用していると状況によっては交換が必要になってしまうこともあります。
この記事では、インプラントの上部構造や全体の交換が必要な場合について解説し、さらに放置するリスクについても説明します。
目次
■上部構造の交換が必要な場合
◎摩耗や変色
上部構造である歯の形をした被せ物は、長年にわたって食事をしたり、歯ぎしりをしたりすることで摩耗します。
これにより、噛み合わせがずれたり、見た目が悪くなったりすることがあります。
また、色が変わり、周りの天然歯と調和しなくなることもあるため、審美的な理由で交換を希望する方もいらっしゃいます。
◎破損や損傷
インプラントが硬い食べ物などによって破損した場合、歯の根の役割を果たすインプラント体(フィクスチャー)自体に問題がない限り、上部構造のみの交換で対応可能です。
上部構造は、比較的容易に交換することができるため、損傷が発生した場合でも比較的早く元の状態に戻すことが可能です。
◎デザインや素材の変更
最近では、より自然な見た目を追求した高品質な素材が採用されています。
そのため、以前のインプラントが気に入らない場合や、素材が古くなった場合には、新しいデザインや素材に変更するために上部構造を交換することもあります。
■全体の交換が必要な場合
◎インプラント体(フィクスチャー)の問題は修理では対応できない
被せ物となる上部構造と、その土台となるアバットメントは、何らかの破損が生じると交換で済む場合もありますが、インプラント体に問題が起こったケースでは全体の交換が必要です。
インプラント体は顎の骨に固定されているため修理は基本的に不可能で、問題が起こった場合は再手術を行って交換する必要があります。
◎インプラント周囲炎の進行
インプラントを支える骨や歯肉が細菌に感染し、炎症を起こすインプラント周囲炎が進行すると、インプラント自体が不安定になり、交換が必要になることがあります。
放置してしまうと顎骨が吸収され、インプラント体が緩んでしまうことがあるため、早期の対応が大切です。
◎インプラント体の破損や緩み
インプラント体自体が何らかの原因で破損したり、骨との結合が弱くなって緩んだりする場合、全体の交換が必要です。
長期間にわたって過剰な負荷がかかると、インプラント体に亀裂が入ったりすることがあります。
このような場合は、インプラント体を取り外し、骨の状態を改善した後で新しいインプラントを装着することが必要になります。
◎顎骨の吸収による問題
インプラントは顎骨と結合して安定性を保っていますが、年齢や病気、その他の要因で骨が吸収されてしまうことがあります。
この場合、インプラント体がしっかりと固定されなくなり、交換が必要になることがあります。
骨の吸収が進んでしまった場合、骨移植を行ってから新しいインプラントを装着することもあります。
■問題の生じたインプラントを放置するリスク
◎インプラントの脱落
インプラント周囲炎や骨の吸収が進行すると、インプラントが不安定になり、最終的には脱落してしまうことがあります。
インプラントが脱落することで、再度治療を行う必要が生じ、治療の手間や費用が増加する可能性があります。
◎周囲の歯や骨への悪影響
インプラントが問題を抱えたまま放置されると、周囲の歯や骨にも悪影響を及ぼすことがあります。
炎症が広がると、健康な歯や顎骨にまで影響し、さらなる治療が必要になるケースも少なくありません。
【問題が生じた場合はすぐに修理や交換を】
インプラントは長期間使用できる信頼性の高い治療法ですが、不具合が生じた場合には修理や交換が必要になることがあります。
上部構造の交換で済む場合と、全体の交換が必要な場合とがありますが、いずれにしても定期的なメンテナンスと早期対応が大切です。
問題を放置することで、インプラントの脱落や周囲の歯や骨への影響が大きくなるリスクがあるため、速やかに歯科医師の診断を受けましょう。