
歯ぎしり・食いしばりがあっても人工歯根の治療は検討できるか
歯ぎしりや食いしばりの癖があっても、お口の状態や対策の条件を整理することで、人工歯根(インプラント)治療を選択できる場合があります。「せっかく入れた歯をまた壊してしまうのではないか」とためらう気持ちは自然なことです。この記事では、歯科医院で適応を判断する順番や、就寝中・日中の対策、契約前に確かめておきたい管理や費用の条件を解説します。
この記事の要点まとめ
- 歯ぎしりで歯がこわれたことがあるか、骨や噛み合わせ、毎日続けられるお手入れを確かめ、治療ができるかを歯科医師と相談します。
- ナイトガードと日中の意識づけを使い分け、歯ぎしりや食いしばりへの対策を組み合わせます。
- 入れ歯・ブリッジも含む治療法や、通院・維持費・保証条件を契約前に確認します。
歯ぎしり・食いしばりがある方の人工歯根治療は、相談と検査をどの順番で進めて適応を判断するか

歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)がある場合の人工歯根治療は、まず過去の破損歴や生活上の気がかりを共有し、画像検査とお口の中の診察を重ねて適応を見極めます。骨の状態だけで判断するのではなく、治療後に続けられる管理の条件まで含めて計画を立てることが大切です。
治療を決める前に、過去の破損と続けられる管理の条件を相談する
治療を契約する前に、これまで被せ物を修理した回数や、歯が割れて抜歯に至った経緯を歯科医師へ伝えておくことが出発点になります。将来的に修理費が重なることや、家計への負担が気になっている段階から相談して構いません。
インプラントにするか入れ歯にするか迷う段階から相談を受け付け、事前のカウンセリングに時間をかけて希望や不安を丁寧に聞き取る体制をとる歯科医院もあります。無意識の歯ぎしりを自力で止められないとご自身を責める必要はありません。まずは気になっていることをそのまま言葉にして伝えることが、無理のない治療選びにつながります。
CTで確認する骨の状態と、別に確認したい歯ぎしりの影響
パノラマレントゲンではお口全体を平面の画像で確かめ、歯科用CTでは人工歯根を支える顎の骨の量や厚み、神経や血管の位置を立体的に確認できます。ただし、歯科用CTの画像だけで、歯ぎしりの強さや頻度、治療の可否までをすべて判断できるわけではありません。
歯ぎしりや食いしばりは、就寝中と日中の活動時とで現れ方が異なります1。そのため、画像検査とは別に、日頃の自覚症状の聞き取りや、歯のすり減り具合、お口の中の所見などを組み合わせて評価を行う必要があります1。
破損歴・噛み合わせ・顎の症状から見る「進める」「対策を先に」「別の方法も考える」の分かれ目
歯科医師は、骨の状態に加えて、被せ物の破損の繰り返し、残っている歯のすり減り、朝起きたときの顎や頬の筋肉のこわばり、噛み合わせのバランスを総合的に確認します。歯ぎしりが人工歯根の周りの骨の減り方にどこまで影響するかは、歯ぎしりのある人とない人を分けて調べた研究が少なく、まだはっきりしていません2。
天然の歯の根のまわりには歯根膜というクッションがありますが、人工歯根と骨のあいだにはこのクッションがありません。そのため、そのまま治療を進めるか、噛み合わせの調整やマウスピースによる対策を先行させるか、あるいは別の治療法を検討するかは、一人ひとりの診察結果をもとに慎重に判断されます2。
目安として、被せ物の破損を繰り返している場合や、顎の筋肉のこわばりが強い場合は、マウスピースや噛み合わせの調整を先に行うことが多くあります。骨の量が足りない場合や、強い力への対策を続けるのが難しい場合は、入れ歯やブリッジなど別の方法もあわせて考えます。
検査結果に加え、仕事や生活の中で続けられる対策を整理する
お口の検査結果だけで治療の設計を決めるのではなく、患者さまがどのような生活を送りたいかをじっくりすり合わせることが欠かせません。たとえば、早朝出勤や出張が多く就寝用のマウスピースを毎晩使い続けられるか、運転中や仕事中に奥歯を食いしばる場面がないかといった日常の背景が関係してきます。
また、どのくらいの間かくで通えるかや、ご家族の学費などお金のことも先に伝えておくと、むりなく続けられるお手入れのしかたを歯科医師といっしょに考えやすくなります。
ポイント
歯科用CTで骨をみるだけでなく、これまでに歯や被せ物がこわれたことや、毎日の暮らしで続けられるお手入れのしかたも先に伝えて、治療の進め方を決めていきます。
ナイトガードの限界とインプラント以外の選択肢を踏まえ、松山市で契約前に確かめたい条件
人工歯根を長く保つには、就寝中に使うナイトガードの役割と限界を知り、日中の食いしばり対策と使い分けることが求められます32。また、外科処置や維持管理の負担に迷いがある場合は、入れ歯やブリッジも含めて比較し、費用や保証の条件を契約前に確かめておくことが大切です。
ナイトガードは歯ぎしりを止める装置ではない:就寝中と日中で分けて考える対策
就寝中に装着するナイトガード(スプリントなどのマウスピース)は、無意識にかかる強い力を受け止めて分散し、人工歯や周囲の骨への負担を和らげるための装置です2。子どもを対象とした睡眠研究では、眠りが浅くなり交感神経の働きが高まる時期に歯ぎしりが集中して発生することが報告されています3。ナイトガードは睡眠中の歯ぎしりそのものを止める装置ではなく、装着していても強い力による破損をすべて防ぎきれるとは限りません。
人工歯根の位置や噛み合わせに応じて、ハードタイプやソフトタイプなど装置の素材や形が調整されることがあります。出張時はケースに入れて持ち運び、万が一装着を忘れた翌日に顎の違和感があれば早めに歯科医院へ相談します。なお、歯ぎしり対策のマウスピースは公的医療保険が適用される場合があり、3割負担で4,000〜5,000円程度が一般的な相場です(記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用や診察・型取り・調整・再製作の内訳は医療機関により異なります)。
一方、日中の仕事中や運転中に無意識に上下の歯を触れさせる癖(TCH:歯列接触癖)や食いしばりには、別の対策を行います。本来、安静にしているとき上下の歯はわずかに離れているため、目につく場所に印を貼るなどして、歯が触れていることに気づいたら力を抜いて離す意識づけを取り入れます。
インプラントに決めきれないときは、入れ歯やブリッジも相談する
歯を失った際の治療法は、人工歯根(インプラント)だけではありません。外科手術への抵抗感や、周囲の健康な歯を削ることへのためらい、治療後の管理の負担も踏まえ、入れ歯やブリッジも含めた選択肢の中から相談して決めることができます。
| 治療法 | 特徴と構造 | 歯ぎしり・強い力への配慮 |
|---|---|---|
| 人工歯根(インプラント) | 顎の骨に人工の土台を埋め込み独立した歯を作る(自由診療) | 歯根膜がないため、噛み合わせの調整やナイトガードでの力の分散を図る |
| ブリッジ | 抜けた歯の両隣の歯を削り、連結した被せ物を固定する | 支えとなる隣の歯や被せ物に力がかかるため、破損や土台の歯への負担に注意する |
| 部分入れ歯 | 残っている歯にバネなどをかけて取り外し式の歯を補う | 噛む力で沈み込みやガタつきが出ることがあり、定期的な調整を続ける |
人工歯根は公的医療保険が適用されない自由診療であり、一般的な費用相場は1本あたり30万〜50万円程度です(記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関により異なります)。また、外科処置を伴うため、術後に腫れや痛み、出血が生じるリスクや、清掃不良・強い力によってインプラント周囲炎(人工歯根の周りの組織の炎症)が起きるリスクがあります。なお、入れ歯やブリッジを選んだ場合でも噛む力による影響は受けるため、どの方法でも力への配慮と定期的な調整は必要です。
契約前に確認したい管理費用・破損時の対応・保証条件
納得して治療に進むためには、事前の説明で疑問を解消し、同意したうえで契約することが基本となります。ご家族と相談して治療を決める際は、診察時に次の項目を確かめておくと判断しやすくなります。
- ナイトガード関連の費用:製作費のほか、噛み合わせの調整や摩耗時の交換・再製作にかかる費用
- 通院頻度の目安:治療前、人工歯根の埋入後、上部構造(人工歯)装着後のそれぞれの通院間隔
- 定期管理の内容と費用:噛み合わせやネジの確認、専門的なクリーニングの内容と1回あたりの維持費
- トラブル時の対応:人工歯の欠け、ネジのゆるみ、噛んだときの痛みや歯ぐきの腫れが出た際の連絡方法と修理費の考え方
- 保証条件:定期検診の受診やナイトガードの使用状況が、保証の対象条件にどう関係するか
松山市内で仕事帰りや休日に通院を続けることを考える場合、職場や自宅からの動線も確かめておきたい点です。たとえば松山市駅から徒歩6分のように公共交通機関や車で通いやすい立地であれば、治療後の定期チェックやマウスピースの調整にも足を運びやすくなります。
ポイント
就寝中のナイトガードと日中の意識づけを分け、入れ歯やブリッジも含めた選択肢と維持費用・保証条件を契約前に歯科医院で確認しましょう。
よくある質問
Q. 歯ぎしりをすると歯の摩耗は起こりますか?また、削れた歯は治りますか?
A. 強い力で歯をこすり合わせる歯ぎしり(グラインディング)や食いしばり(クレンチング)が続くと、天然の歯や被せ物の表面がすり減ったり、欠けたりすることがあります1。すり減りや欠けが進まないように、マウスピース(スプリント)で歯や被せ物を守る方法があり、睡眠中に顎の関節にかかる負担を軽くできる可能性もあります4。すり減った歯は自然に元の形には戻りにくいため、大きく欠けた場合は詰め物や被せ物で形を補う処置を歯科医師と相談します。
Q. ひどい歯ぎしりや強い食いしばりを改善するにはどうしたらいいですか?
A. 就寝中の歯ぎしりは無意識の睡眠反応と関わりがあるため、自力で完全に止めることは難しいとされています1。そのため、就寝中は歯科医院で作ったナイトガードを着けて、歯や人工歯根にかかる力を分散させます。日中の食いしばりは就寝中とは現れ方が異なるため、気づいたときに顎の力をぬくよう意識するなど、時間帯に合わせた対策を歯科医師と相談します。
Q. 人工歯根の噛み合わせ調整やメンテナンスはなぜ必要なのですか?
A. お口の中の噛み合わせは、残っている天然の歯のわずかなすり減りや移動によって少しずつ変化します。人工歯根と骨のあいだには、天然の歯にある歯根膜のようなクッションがないため、被せ物が割れたり、被せ物をとめるネジがゆるんだり折れたりすることがあります5。そのため、定期的に噛み合わせとマウスピースの合い具合を確かめることが、長く使い続けることにつながります。
参考文献
1. Manfredini D, Ahlberg J, Lobbezoo F. Bruxism definition: Past, present, and future – What should a prosthodontist know? The Journal of prosthetic dentistry (2022). PMID: 33678438 / DOI: 10.1016/j.prosdent.2021.01.026
2. Häggman-Henrikson B, Ali D, Aljamal M et al. Bruxism and dental implants: A systematic review and meta-analysis. Journal of oral rehabilitation (2024). PMID: 37589382 / DOI: 10.1111/joor.13567
3. 大阪大学 ResOU「子どもの歯ぎしりが発生する眠りのしくみを解明」 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210705_1
4. 歯ぎしり – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/bruxism02.html
5. Q. インプラント治療後のトラブルはありますか? | 松本歯科大学銀座8丁目クリニック. https://ginza8.mdu.ac.jp/info/uncategorized/2487/
平成18年3月 九州大学歯学部卒業
福岡市にて勤務
横浜市にて勤務
平成27年12月 開業
ITI日本支部公認インプラントスペシャリスト
日本歯周病学会 認定医
介護支援専門員
【所属学会】
日本口腔インプラント学会
インプラントスタディグループ松山
日本矯正歯科学会
日本歯周病学会
日本顎咬合学会
四国SJCD
JACID
日本臨床歯周病学会
日本顕微鏡歯科学会
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